単純に考えて我々の対応の仕方としては
3パターンある。
1つ目はシンプル。
基本的に何も変える必要がないというもの。
週1回通っているのであれば1回、
2回ならば2回のまま行く。
すべての生徒がこれに当てはまるに
越したことはない。
2つ目はマイナーチェンジが必要な場合。
たとえば、週1回なのを2回に増やしたり
冬休みから受験直前までに集中的に授業を行う。
この場合に注意すべきなのは、あくまでも
全体のバランスを考えなければいけないと
いうことである。
国語を教えているからと言って、国語の点数UPの
ことだけを考えて、授業数を増やしましょうというのでは
提案とは呼べない。
国語が10点上がっても、そこに多大な時間を割いた分、
算数の点数が15点下がっては意味がないからだ。
私としては、国語が10点上がって算数も5点ぐらい
積み増せるようにしなければいけないと考えている。
算数を教えずにどうやってそれを実現するのか、と
問われれば論理的に説明できる自信はないのだが、
私はそのようなものをイメージし、実践できていると
勝手に思い込んでいる。
思い込みで点数が上がれば苦労しないわけだが、
教えている私が「大丈夫かな?」と思いながら
子供たちに接しているより、「間違いない」と
根拠のない自信を胸に子供達に声掛けしている方が
プラスに働くに違いない。
ふむ、単なる精神論になってしまったが、
今回もこの信じ込みパターンを採用する。
そして、3つ目。これは大幅に手を入れないと
いけないので非常にハードである。
誰にとってハードかと言えば、子供もそうであるが、
それ以上に親にとってである。
このパターンは進学塾の授業を削って、
我々の授業の回数を増やすことになる。
しかも、2つ目をマイナーチェンジと
表現しているので、こちらはメジャーチェンジ、
つまり大幅な変更を要する。
親にとっては、我が子が進学塾で皆と同じことを
することである一定の安心感が得られるので、
そこから離れるだけで不安が増幅される。
でも、でもである。これまでその中で
同じことをやってきてうまく行っていないので
あれば、残りわずかな期間で好転する可能性が
あるのかということである。
私は、親御様に単純にそのことを問う。
大抵は受け入れられないだろうなと思いながら。
実際、今年もこれに当てはまる生徒が1人いた。
親御様が私の提案を受け入れてくださり、
進学塾の方に、授業の回数を減らす旨の電話をされた。
詳しい経緯はよく分かっていないのだが、
事務の人にそれを伝えたところ、後ほど担当の先生が
慌てて電話をしてきたとのこと。
「そのような判断をして大丈夫ですか?」という確認を
するために。
それを受けて、もう一度親御様から私の元に連絡があった。
「『志高塾の松蔭の提案だから間違いはない』と
言ってください」と格好よく決めゼリフを
吐きたかったのだが、そこは堅実な一手を。
それに「松蔭って誰やねん」、「志高塾なんて聞いたことないわ」
と言われでもしたら激しく傷ついちゃうので。
「現在高2のA君、高1のB君が通っていた
塾ですと伝えてみてください」とお願いした。
その効果は抜群であった。
その先生が、2人のお母様のことをご存知で
「あのお母様たちが選んだ塾の先生が言うのであれば」
ということで、それによって難なく話が通ったとのこと。
「志高塾の松蔭」を出すまでも無かったのだ。
わーはっは。
その先生曰く、進学塾ともめる形でそのようなことを
伝える親も少なくないそうなのだが、上のお二方は
そこを上手にやっていたのだ。そして、それが信用につながった。
私はそんな事実を知る由もなかったのだが、
その2人のことを知る先生であれば大丈夫だろうと
いう確信があった。ちなみに、A君、B君は、
2つ目のマイナーチェンジのパターンであった。
私は時々「良い親御様に囲まれている」ということを
口にするのだが、この一事はそのことの1つの証である。
「名前を使わせていただきました」とA君の親御様に
事後報告すると「使えるのであればいくらでも使ってください」
とのありがたいお言葉をいただいた。
なお、最初の時点でその6年生の親御様には、とにかく
進学塾ともめないように「塾の授業の質が悪いから」
と言うことではなく「これまでうまく行っているとは
言えないので、個別にかけてみたい」という方向で
話を持っていった方がいいということはお伝えした。
もめるとそのしわ寄せは間違いなく子供に来る。
「できもしないのに、授業の回数を減らしたら
絶対合格できへんぞ」といった脅しの形を取って。
常に心がけてはいるが、いつも以上にこの時期は、
いたずらにお母様の不安を煽らないようにしなければ
ならない。それが子供に伝播してしまうから。
それは事実を包み隠したりねじ曲げたりすることとは
全く異なる。我々の役目は「問題を報告すること」ではなく、
「問題を解決するために手を打つこと」なのだから。
1ヶ月前は受験生に対して心配だらけだったのだが、
最近は明らかな手応えを感じ始めている。
残り1ヶ月半で彼らがそれ以上にレベルアップすることは
ゆるぎのない事実である。
受験生以外にも同じようにエネルギーを注ぐことを
念のために付記しておく。